スター・トレック:ビヨンド、レビュー【後半ネタバレあり】

4.5

正史スタートレックのユートピア的な素敵カークに近づけたら、トレッキーの機嫌は少し治ったものの、非トレッキーから「つまんない」と評価された、切ない作品。

基本情報

原題Star Trek: Beyond
邦題スター・トレック:BEYOND
タイプSF
公開日2016年7月22日
監督ジャスティン・リン
J・J・エイブラムス
脚本サイモン・ペッグ
ダグ・ユング
原作者ジーン・ロッデンベリー
おすすめ度4.5 (1~5点)

トレーラー

あらすじ

フィボナン共和国とティーナックス星の和平協定の仲介者として、ティーナックスが大昔に盗んだ兵器を手放すことで和平の証として渡そうとするも失敗し、エンタプライズ号に持ち帰るカーク艦長。

次の休暇地、宇宙基地ヨークタウンで、これまでに出会ったことがない新しい宇宙人からの救援に答えて、休暇返上し、惑星連邦にとって未知の領域で不安定な星雲の先にあるアルタミッド星へと出発するエンタプライズ号とクルー。

脚本、世界観

トレーラーのロック系音楽が、あまりにこれまでのイメージと違いすぎて、恐れおののいたのですが世界観は正史に近づき、ヒーローっぽいカークを中心に、各クルーがそれぞれ活躍の場を持つ、ベタなSFアクションでした。

脚本も丁寧に書かれていることが伝わって来たので、一回しか見ない場合は『スター・トレック 2009』や『スター・トレック イントゥ・ダークネス』が面白いかもしれませんが、繰り返し見るなら断然、本作です!

登場人物

カークとそのクルーは、1、2作目から続投で、名優ぞろいなので、安定感があります。味方になるジェイラ役のソフィア・ブテラも敵役クラール役のイドリス・エルバもそれぞれキャラが立っていて素晴らしい。

キャスト選びは上手いんだよな。JJトレック。

本作の作成前に老スポック(正史のスポック)のレナード・ニモイが亡くなり、公開前にチェコフ役のアントン・イェルチンが亡くなったことで、どことなくしんみりなる作品です。

アクション、笑い

この作品のポスターに使われたイメージは、アクション要素皆無だった映画版スター・トレック第一作のオマージュですが、本作はアクション満載でした!

コメディー監督・俳優のサイモン・ペグが脚本を担当したこともあり、しょーもないギャグが散りばめられており、明るい雰囲気を出しています。

映像美

映像は、少しケチがついているっぽいですが、個人的には見やすいし、2020年にも通用する未来感を醸すヨークタウンなどのデザインと映像・CGで一級品であることに変わりないと感じました。

音楽

トレーラーで衝撃を受けた「ロック」音楽なんですが、とても見事な手法で作中に導入されました。それ以外は正統派トレック楽曲って感じだったところも好感です。

以降、「感想」と「最後に」は、ネタバレ注意です。問題なければ続きをどうぞ。

感想

文句ないと書くこともない。笑。

JJトレック恒例のオープニングの宇宙人エピソードは、後からストーリーと関係してきてよく出来ていました。何やら危険な兵器であることは示唆されていたのですが、そんなものを贈り物にするなんて物騒ですね。

フィボナン星人が小さくて、笑った。そうだよね。いつも常に人間と同じサイズの宇宙人じゃない方が自然だよね。あと、新しいワープ中のエフェクト、結構好き。

大分お行儀が良くなって、少々燃え尽き症候群気味のカークが誕生日にボーンズとまったり飲んでるシーンも、正史でボーンズがカークに老眼鏡を送ったシーンに重なって、しんみり。ドタバタばっかりじゃないJJトレックってあり得るんだね。

からの、新品ピカピカ宇宙基地ヨークタウン。最初に出てきた時は、美しいケド「ありがち宇宙ステーション」かと思ったのですが、後半にこの街を深掘りしてて、すごかった。

そういえば、ジョージ・タケイもビックリ!、「スールー、ゲイだった」シーンもありました。大人になった娘のスタートレックVIに出てましたね。

あと、コモドールパリス役のShohreh Aghdashlooさんは何とお読みするのかさっぱり分かりませんが、凄く存在感がある女優さんですよね。最近だと『The Expanse』が印象的でした。

スターフリートの艦長を続けることに疑問を感じ、ヨークタウンの副提督に志願するもカークと、滅亡したバルカン星を盛り立てるためにスターフリートを辞めようかと考えているスポック。

そうこうしている内に未知の宇宙船からの救援要請を受けます。互いの心の内を伝えられぬままに、出動するエンタプライズ号。

星雲を抜けてアルタミッド星へ着いたと思ったら、謎の宇宙艦隊から猛烈くまんばち攻撃みたいなのを受けます。

戦艦同士が頭突き状態でゴリゴリ衝突した、『ネメシス』も衝撃的だったけど、こういう宇宙艦隊もあってもいいよね。オリジナリティーを出そうと工夫を凝らしている感じがいい。

圧倒的に不利で、全く歯が立たず、多くの犠牲を出しながら、船を捨てて、脱出ポットでクルーを避難させ、惑星に墜落。

「今度の敵は圧倒的」感がまたいい。

「We will find hope in the impossible.」

しばらく後のシーンのスポックの台詞ですが、まさにそんな感じなところが、スター・トレックの良さですな。

クルーのほとんどは、クラール率いる未知の宇宙人グループの捕虜になります。

カーク艦長とチェコフは、救援が罠だったと知りつつも、残りのクルーを探すため、エンタプライズ号の円盤部分へ向かい、プロメテウスぺしゃーんで敵艦長を倒します。

大けがをしたスポックと医師のボーンズは、スポックの簡易手当をした後は、みんなと合流すべくさまよっている間に、敵の狙いが冒頭のティーナックス星人の贈り物であることを察知します。

正史ではカーク、スポック、ボーンズの3人が三羽烏だったのですが、ケルビン史ではカーク、スポックの2トップで、寂しかったんですが、今回はボーンズも存在感を出してて、いいですね。

「Damn it, Jim. I am a doctor, not a …」フレーズ、久しぶりに聞いた。

墜落した先でネコっぽい女性宇宙人ジェイラに助けられたスポックは、ジェイラが「家」として使っているUSSフランクリンに案内されます。トレーラーを見た時にカークのボンドガールかと思いきや、スコッティ―と愉快な仲間たちのメンバー入りとは、意外でした。

クラールに捕まったスールーとウフーラは、クラールたちの狙いを探るべく行動を起こし、クラールたちが惑星連邦の情報をハッキングしていたこと、クラールは他人のエネルギーを吸収することを知ります。そして残念ながら人質の命を救うために未知の兵器をクラールに渡してしまいます。

てか、キンザーのくしゃみスゲー。この「That is one heck of the cold」はディスカバリーでも使われてましたね。

各員バラバラに活躍するので、一般ウケはしなかったようですが、別々に行動しながらも、それぞれが自分たちの能力を活かして行動した結果、最後にすべてがつながり、墜落していたUSSフランクリンが再び飛び立つというプロットは、前作で底まで落ちた私の中のスター・トレックが復活した様子に似てますな。

どう見ても狂暴な宇宙人的な外見のクラールの中身が実は人間で、しかもUSSフランクリンの船長だったのは、衝撃でした。でも、そういわれれば、武器のテストをした時に、ちょっと目をそむけてたっけ。これがウフーラが察知した、クラールの本心って事かな?

てか、クラールは、USSフランクリンの船長だったなら、USSフランクリンが隠されていることぐらい分かっただろうに、カークたちがフランクリンを再起できると思っていなかったのか、クラール艦隊を撃破できるとも予想できなかったのか、真っすぐヨークタウンへ向かったのは、読みが甘すぎましたね。

クラール艦隊の子機同士がラジオ波で連携をとっていることを発見し、ロックミュージック(=カークたちにとってのクラシック)で撃破していったのは、見ていて爽快でした。

エフェクトもキレイだったと思うケドな。なんで不評だったんだろうな…

個人的には、ヨークタウンについた後の、スターウォーズ的なシティーチェイスの方が、微妙だったけどなぁ。まぁ、ヨークタウンツアーとしては、よかったですけど。

あと、ヨークタウンの中心で、クラールとカークの肉弾戦が終わって、負けたかのように見えたクラールが風の流れに乗って舞い戻るのも、流石はスター・フリート元艦長、「諦めずに知恵を絞り、機転を利かせる」って感じで好きでした。普通なら風に乗れるわけがないんですが、宇宙空間っぽい重力設定もSFって感じですよね。

スター・トレックでは重力遊びがあまり多くありませんから、フツーに楽しい。

最後は、みんなで集まって、カーク艦長の誕生祝い。正史のカークやピカードがグラスを手向けたように、「To absent friends」と作中亡くなったクルーと老スポック、または現実にて亡くなったレナード・ニモイ、アントン・イェルチェンを追悼したのが、しんみりしました。

と言っても、ミドルライフクライシスから回復してやる気を出したカーク、スポック、ボーンズ、そして残りのクルーが修理中のエンタプライズ号を見上げるエンディングは、大円団って感じで、さわやかでした。

最後に

JJトレック4も企画されていたようですが、切ないながらも爽やかに終わったので、もう次回作はいらないかな。

スタートレック:ネメシスみたいな終わり方、イヤだし。

満足の☆4.5です。

最後までお読みいただきましてありがとうございました。

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