『スタートレック:ピカード』の第3話に登場した元ボーグのヒューが『スタートレック:ネクストジェネレーション』の登場回を見直してみました。
最初からネタバレで突っ走っていますので、ご注意くださいませ。
いつものごとく未開の地をウロウロしながら美しい恒星を眺めていたら、取り巻く惑星から連続する未知の信号を受信したエンタプライズ号。救難信号かもしれないと、降りて行ったら、思春期の男性ボーグを死にかけの状態で発見するが、ボーグ船は近くにいない模様。
キャプテンピカードは、ボーグは危険すぎるので速やかに船に戻るように指示をだすが、医師のバレリーは、助かる命はボーグだろうと見殺しにできないから助けたいと訴え、ウォーフは証拠が残らないように殺して立ち去るように提案する。
バレリーの意見を尊重したキャプテンピカードは、船に受け入れることにするが、拘留エリアの独房に入れる。バレリーは医務室に運びたがったが、きっぱりと断ってしまう。
キャプテンピカードは、ボーグに拉致されて人体改造された経験とそのトラウマがあるので、その危険性を軽視できないんですね。カウンセラーのディアナが執務室に赴き助けを申し出るが、これまたきっぱり断るピカード。
独房の中で治療を施し、なんとか助けようとするバレリーの目の前で、エンジニアのジョルディーにボーグの主要指示系にウィルスを仕掛け、それがハイブ(巣)に戻った時にボーグを全滅させられるようなプログラミングを組むようにと指示を出します。
いやいや、いやいや。
ウィルスを仕掛けて一つの種を絶滅させようとするなんて、フェデレーションやスターフリートのユートピア的世界観に反します。
ないない、ないない。
ブリッジ幹部の会議では、賛成派と反対派にきっぱり2分します。
バレリーは、彼を患者として見た時に、ボーグであることは感じられず、一人の生きている少年でしかないのに、その彼を破壊用のツールとして生かし、送り返すなんて考えられないと反対します。
意識を取り戻したボーグの少年にエネルギー(食事)を与えたりとケアを続けるバレリーとジョルディー。We are Borg. You will be assimilated. Resistance is futile.というボーグの決まり言葉しか言えないボーグ少年に名前を聞いたりと人間的に話しかけながらエネルギー取得口を設置するジョルディー。
ウィルスを埋め込むためには、ボーグ少年を研究せざるを得ず、チップを直すと言って、テストに協力させている中でも、人間的な交流を続けるボーグ少年とバレリーとジョルディー。
バレリーとジョルディーとyou… you… you… hugh… Hugh!という風に3 of 5という職責名ではなく、名前を与えられるヒュー。
これがヒューの誕生です。
バレリーとジョルディーは、人間はボーグに吸収されて個性を失いたくないと考えていることなどをヒューに伝えます。
一方、ボーグに種を絶滅の危機に陥れられたガイナンは、ピカードがボーグ少年を船に受け入れたこと自体が信じられないという様子で、ピカードを嗜めていましたが、ジョルディーから会ってみるように勧められ、ヒューの独房に出向きます。
ガイナンに「You will be assimilated」って言わないの?と聞かれ、「え?、あなたは吸収されたいの?」と聞き返すヒューに驚くガイナン。
ガイナンの種の殆どはボーグに吸収され、宇宙に散り散りになり、故郷もなくしたが、わずかに生き残り、抵抗は無意味ではない事を教えられるヒュー。
「仲間がいなくなって、寂しいんだね。私たちも寂しいんだ。」と共感を示すヒュー。少しずつですが、確実に変化を見せます。
この後、ジョルディーに「個性を失うのは死ぬことに近い」と言われ、「眠っている時に頭の中に他の個体の声が聞こえないのは寂しくないのか?」っと、尋ねます。「寂しい時はあるけど、だから友人がいるんだよ。」と答えるジョルディーに、「ヒューにとってのジョルディーみたいだね」と返すヒュー。
彼の寂しそうな、心細そうな表情がとても印象的で、涙が…
ジョルディーは、ヒューにウィルスを埋め込む準備が出来たものの、心が痛み、この方法は避けたいとキャプテンピカードに申し出ますが、実験体に心を寄せるのはやめなさいとたしなめられます。
キャプテンピカードの部屋を訪ね、自分の体験を伝え、ウィルスを埋め込むことが正しいことだと信じられなくなったと伝え、一度は彼に会ってみる事を進めます。
キャプテンピカードは、自制心を失い、ガイナンを怒鳴りつけますが、結局アドバイスに従いヒューと対面します。
キャプテンピカードを見たヒューは、ピカードがボーグに改造された時に与えられた名前「ロキュータス」だと勘違いします。それに乗っかってロキュータスのふりをして、ヒューがボーグであることを確認しようとするキャプテンピカード。
「識別番号は?」っと聞きますが、ヒューは職責ではなく名前の「ヒュー」と答えます。それはボーグの識別番号ではないと聞き返され、「3 of 5」と答えます。
「この種を吸収せよ」とヒューに命じるピカードに、「彼らは吸収されたくない」答えるヒュー。
「関係ない」、「抵抗は無意味だ」と返すピカードに、「抵抗は無意味ではない」、「生き残った人もいるんだ」と言い返します。
「ジョルディーも吸収されなければならないのか?」、「ジョルディーは吸収されたくない」、「吸収されるぐらいなら死んだ方がいいとさえ思っている」、「ジョルディーは死んではならない」、「ジョルディーは友人だ」、「私はあなたに協力しない」、「私はヒューだ」…
ヒューが「We」ではなく、「I」という一人称を使ったのです。人間的交流が結実した瞬間です。
号泣。
キャプテンピカードは、ヒューが一人の個性を持つ存在であることを認め、ウィルスを埋め込むことをやめます。
そしてボーグキューブが近づいてきたので、ボーグキューブに戻りたいか、スターシップに残りたいかをヒューに尋ねると、初めての「自分が望むこと」に戸惑いながらも、ジョルディーがいるスターシップに残りたいと言います。
次の瞬間、それでは危険すぎるので、自分はボーグキューブに戻ることを決めます。自分の希望よりも、みんなを守ることを優先する自己犠牲。ボーグ文化ともいえるのかもしれませんが、そのやさしさに打たれます。
個体だったら吸収されないだろうとヒューと共に遭難場所に降り立ち見送るジョルディー。
とても印象的で切ない話です。
『スタートレック:ピカード』は、マドックス博士にしても、ヒューにしても、TNGの印象的なエピソードを思い起こさせるサブキャラを上手く起用していますね。
最後までお読みいただきましてありがとうございました。
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