TENETは名作。
あらすじ
仲間の情報を守るために殉職を選んだ「アメリカ人」は、目が覚めると死んだことになっており、「TENET」(信念)を合言葉にする謎の組織のメンバーとして迎えられる。
その組織は、「時間」由来の「第3次世界大戦」を防ぐために、時間を逆行する謎の物質を研究しており、「アメリカ人」はそれらの流通ルートを把握するために危険なミッションに挑み続けることに…
感想
クリストファー・ノーラン監督作品は、相変わらず素晴らしい。そして、複雑。
今作は「難解度」という意味では、他の作品ほどではない。コンセプトやルールはいたってシンプルだし、ストーリー運びも親切。
だけど、やっぱり、クリストファー・ノーラン!
編集が絶妙で、いい塩梅に攪乱し、複雑に仕上がっています。
クリストファー・ノーラン作品は、とりあえず最低3回は観るタイプの映画です。
1回目は驚く、2回目は途中途中で止めながら細部の確認・検証、3回目はひたすらに味わう。って感じ。
この作品も、もれなくそんな感じで、ちょうど今、2回目を見終えて、「おぉ~」ってなっているところです。
いや~。すばらしい!!!
名優、見ごたえあり!
まぁ、登場人物が良いというのは、いつものことではありますが…
今回、もっとも印象に残ったのは、悪役アンドレイ・セイターを演じるケネス・ブラナーです。
『ダンケルク』のどう見ても好人物な中佐とは別人物。いや、役的に別人物なんですが、演じ分けが本当に素晴らしい!!めちゃ悪役顔になってるし、狂気をまとっているし、ボソボソしゃべってることがいちいちエグくて、マジこわい。
あと、仲間役ニールを演じたロバート・パティソンもいい役もらえてよかった!!今回の役は、男性からも、女性からも好感を持たれる控えめな爽やかさがあって、輝いてました。これ、ハリー・ポッターのセドリックを超えたんじゃない?
物理学に長けた知性と、危険をいとわぬ行動力、達観していながらも穏やかで優しい気立て、そして意外とぶっぱ系の派手好き。(派手好きは「記録」に残すことが大事な世界観だからそうなったのかもしれないけど…)
超絶不気味な悪役と、安心感抜群の仲間が、良い対比になってました。
そして、驚きの主人公、ジョン・デヴィッド・ワシントン。なんとデンゼル・ワシントンの息子だった!見たことない人だけど、雰囲気あるよな~。とか、無名なのに結構うまいよな~。とか、思いながら見てました。
いやほんと、クリストファー・ノーランって、主人公選びとマイケル・ケイン遣いが抜群に上手いよね!!
てか、安定のマイケル・ケイン。お前はFFのシドか?っていうぐらい、出番はちょろっとなのに、毎回いい仕事して帰りますな。
音楽
これは、この作品唯一のガッカリポイント。
会話の声が聞き取りづらかった。
悪役の話し方がボソボソしてたし、他の人も割と落ち着いた話し方だったのもあって、効果音が大きいと「ん?」ってなることが多かったです。
今回から音楽の担当がハンス・ジマーじゃなくなったのも関係あるのかな?
音楽担当てダイアログのバランスとかも調整するのかな?
次回作のオッペンハイマーも今回と同じ音楽担当みたいだから、ちょっと嫌だな~。
以下、ネタバレ注意
広告をスペーサー代わりに使っていくスタイルぅ。
【ネタバレ】
主なアクションは、オペラハウスの襲撃、美術品保管倉庫への潜入、カーチェイス、敵アジトでの最終決戦。オペラハウスで時間逆行を初めて目撃し、美術品保管庫で時間逆行装置を発見、カーチェイスで別の時間逆行装置を使用、敵アジトで時間順行と逆行の挟み撃ち作戦。
ストーリーが進むにつれて、コンセプトを理解・利用する深度が高まる親切設計。そして2回目を見て、最初からそこにあった時間逆行を目の当たりにして、ほぅ~っと溜め息をつく素晴らしい構成でした。
4つのメインアクションの間にインドの武器商人邸宅に侵入したり、悪役の船に乗り込んだりの小アクションを通してストーリーと人物描写の深堀りをしていく感じ。
残念ながらなのか、幸いなことになのか、英語がわかると、作品名の「Tenet」が信念・教義・主義などという意味で、主人公が妙にこだわっている「Protagonist」が主人公・ヒーロー・リーダー・主唱者などを意味することから、インドに行った時点で、主人公が組織を作った人&リーダー、かつ今の主人公の雇い主ってことが薄っすらわかる。
そして、インドでのニールとの最初の会話と、美術品保管庫に行く前に主人公がニールを妙に信頼して自分が知っている秘密をベラベラ話をしてしまうことで、あれ?っとなる。それで、ニールが驚いたそぶりを見せているにも関わらず、ニールは実は未来の主人公から派遣された未来人なんじゃないかと疑いだす。
で、美術品保管庫で、ニールが誰かの顔を見てビックリしつつも逃がしてあげるシーンで、時間逆行してきたのが「年を取ったバージョンの主人公」か、「今バージョンの主人公」のいずれかだろうと予測し、同時にこの時間逆行装置の所有権が既に味方側に移ってるってことは、そのうち時間逆行を始めるんだろうね…
なんてことまでは、想像できてたんですが、折り返しからの、怒涛の時間逆行シークエンスは、見ごたえありましたね。
カーチェイスの時間逆行で、「はは~ん。そんな感じで使うのね?」って導入されて、次の美術品保管庫の時間逆行シークエンスで、最初に主人公が戦った相手とニールが追いかけた相手が同じ人物だったことに痺れた!!
そしてこのシーンの最後に更に時間逆行している自分たちと再度ニアミスですれ違うところとか、震えた!
いや~。すごいシナリオ…
そして最後の怒涛の最終バトルは、順行と逆行がストーリー的にも同時進行して、惚れた。
なんか、ピアノの練習で、右手→左手→両手みたいに順を追って曲を完成させていくみたい。こんなに親切なストーリー進行なのに、運び方と応用が上手くて、めちゃめちゃ楽しいっていうね。
素晴らしい。
ほめてばっかりだけど、ほんと、ほめるところばっかりなのよ。
あと、主人公に助けられる「キャット」の役割。何故この人を助けることがストーリーの軸になっているのか?この人を助けることがストーリーにもたらす意味は何か?ってところが引っ掛かって、2回目を見た後に調べましたところ…
キャットというか、キャットがとても大事にしている息子のマックスが、味方のニールだとの説がありました。
マックス(Max)はMaximilienの短縮で、逆から綴るとNeilimixam。この最初の4文字がNiel(ニール)なんで、時間逆行してきた版のマックスは、ニールっていうね。キャサリン(Katherine)をキャット(Kat)って読んでる家族ですから、マックスの正式名がマキシミリアンでもおかしくないしね。
なるほど!!
これで、最後のピースがハマった感、ありますわ。
このサイトも、別のサイトも、ウチのドメイン名は逆で読んでも同じになるような綴りにしてますから、なんか、そういう言葉遊びをしたい気持ち、凄くわかるww
ウチのサイト名「TeheheT」と「TeneT」、発想が一緒w
てか、字面まで似てる。
というわけで、安定の大満足をもたらしたクリストファー・ノーラン作品でした。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
コメント